ドレスを筆頭に、洋服やアクセバッグのシェアリングサービスが、日本でも注目されるようになってきました。
衣服に限らず「シェアリングエコノミー」のサービスの数々。
基本的には賛成なのですが、衣服については「うーん。」と思っています。
これについて考えていたことを、まとめておこうと思います。
ごくごく一般的。
「シェアって、エコだよね!」という考え方。
・・・本当に、そうでしょうか?
昔の人は、穴が空いたら繕い、当て布をして、大切に、大切にひとつの服を着続けていました。ひとつの洋服を、大切に着続けることができたら、それだってエコですよね?
そうは言っても
「新しい洋服、新しいスタイルのものを身に付けたい」
「毎日違ったファッションをしたい」
こういった思いが出てくるかもしれません。
では、これは一体誰のために、でしょうか?
周りの人は、あなたが新しい洋服、新しいスタイルでなくても。
また毎日違った服を着ていなくても困りませんから、
ほかでもない「自分のために」、ですよね。
「周りの人に、いつも最新のファッションを着て、オシャレだと思われたい。」多分、こういった欲求が根っこにはあるのかな?と感じます。
心理学では、これを「承認欲求」といって、
相手がいないと自分の欲求が完成しない状態にあります。
自分一人では幸せが完成しないので、
突き詰めていくと「自分がひとりで幸せになれない」という、
誰がというと、自分自身が、
幸せから遠のいている状態なのです。
普段着のシェアリングサービスで満たしたい欲求というのは、
おそらく「エコ」ではない。気がするのです。
洋服のシェア!エコだよね!
・・・と言われて、うーんと、考えてしまう点です。
ちなみに、
舞台衣装で、一番つくるのが難しいのは、「ボロ」なんですよ!
汚す、こするでは、得られない、経年の劣化というのがあるのです。
それには、時をかけるしかない。
なので、衣装屋さんなどでは、大切に「ボロ」が保管されています。
そして、ボロを作るために、わざと日向に衣装を出したり、手間暇と、文字通りの「時間」をかけていらっしゃいます。
ただ、まぁ昨今出回っている洋服の多くは、
「経年劣化に絶えられない」つくりなので、残念ながら。
経年劣化に絶えて、今日まで持ち届けられた服。
といえば、やはり「古着」や「ヴィンテージ」の類でしょうか。
これらの魅力。
「一点物が手に入って、他の人とかぶらない!」という、
これまた承認欲求的な魅力もあるはあるのですが、
もうひとつは、「上質のものが、手に届く範囲で売っている」ことだと思います。
ヴィンテージで、本当によいものを扱っているお店へいくと、
タグに1950年代、1960年代、1970年代、1980年代などと
書いてあることも多いです。
1980年代であっても、30年以上前のもの。
1960年代〜1970年代は、大量生産・大量消費に入る前の、豊かな時代。
一着、一着を大切に仕立てて、大切に着ていた時代でしょうから、
本当によい生地や、よいボタンや、よい仕立てのものがたくさんあって、
見ているだけで、うっとりしてしまいます。
フレアースカートひとつをとっても、たっぷりのドレープで、
生地が本当に素晴らしかったり。
やっぱり最近のファストファッションのものだと
「あー、生地がすけすけだし、布がもったいない!ってかんじの使い方だなぁ。」と、そんなかんじです、残念ながら。
一目でわかります。
もし、普段着でのシェアリングサービスの利用を検討しているのであれば、
「自分が一体なぜ、このサービスを利用するのか?」
本当に、根っこにある思いをのぞいてみるのがいいかもしれません。
本当に、豊かな気持ちでいるために。
余談になりますが、シェアすることで、豊かになる要素というのは、きちんと見つめていきたいところで。
衣・食・住で見ていきたいのですが、
「食」
食事する時間や場所、思い出はシェアできても、最終的に胃袋におさまる取り分は、ひとりひとりの量がいります。
5人いて、3人分しかなければ、そしてそれが毎日続けば、豊かな気持ちからは遠ざかります。なので、この場合もシェアしているのは、「物質的なもの」以外の部分だったり、もしくは、「余剰分」であるはずです。
「住」
また、ひとつ屋根の下。
みんなで共同生活をする豊かさこそあれど、自分が心安らかに、安眠できるスペースは、絶対に必要です。そればっかりはシェアはできません。
エアビーアンドビーなども、シェアをして豊かになるのは、余白の部分ですよね。余白の部分をシェアしあうことで、場所の違い、旅という体験が2倍、3倍へと増えていく。
そして、「衣」。
物理的に、洗濯替えなども入れると複数枚を持つことになりますから。
着ていない間は、「余白」と言えるかもしれません。
ただ、衣服には、TPO以上の、社会性以上の、「表現する」という「衣服の力」があります。
肌の色、目の色、髪の毛の色、身体が違うように、ひとりひとり、似合うものや、より魅力的に見えるものはぜったいに違います。
特に、スーツは細かいサイジングがすべてですし、。
そして、身体にとったら、洋服は異物でありながらも、経年によって、身体になじんだり、身体の一部になっていきます。
衣服の豊かさとは、そういうところにあって、非常にパーソナルなものなので、
「シェア」するよりも「何を所有するのか」ということを厳選することで、エコや、投資や、自分らしさや、そして豊かさが得られると、そのように感じてなりません。
ご参考までに。